第二種作業環境測定士試験は、作業場の空気中にある有害物質の濃度を測定し、職場環境の安全を確認するための専門資格です。第一種と比べると扱える測定対象は限られますが、労働衛生や化学物質管理に関わる仕事では、実務に直結しやすい資格といえます。
試験では、労働衛生一般、労働衛生関係法令、デザイン・サンプリング、分析に関する概論などが問われます。理系知識がある人や、職場で安全衛生・環境測定に関わっている人は取り組みやすい一方、初学者は専門用語や法令、測定方法の考え方に慣れるまで少し時間がかかります。
この記事では、第二種作業環境測定士試験の勉強法を中心に、独学で合格を目指すためのポイントや勉強時間の目安、効率よく対策するために押さえておきたい科目ごとの学習方法をわかりやすく解説します。

科目別の具体的な勉強法
第二種作業環境測定士試験は、単なる暗記試験というより、「作業場の有害因子をどう測り、どう評価するか」を理解しているかが問われる試験です。
試験科目は、労働衛生一般、労働衛生関係法令、作業環境について行うデザイン及びサンプリング、作業環境について行う分析に関する概論が中心です。公表問題も掲載されているため、独学では必ず過去の問題形式に慣れておきたいところです。
労働衛生一般の勉強法
労働衛生一般では、作業場にある有害因子が人体にどのような影響を与えるか、また作業環境をどう評価・改善するかが問われます。範囲としては、有害原因の人体への影響、作業環境の評価と改善、作業方法の改善、労働衛生保護具などが含まれます。
この科目は、有害物質名だけを覚えるのではなく、「発生する作業」「健康障害」「管理方法」をセットで覚えるのがポイントです。
たとえば、有機溶剤であれば、塗装・洗浄・印刷などの作業で使われやすく、吸入による中枢神経系への影響や皮膚への影響が問題になります。粉じんであれば、研磨・切断・粉体取扱いなどの作業と結びつけ、じん肺などの呼吸器障害につなげて覚えます。
この試験ならではの対策としては、「作業場に何があるから、どんな測定が必要になるのか」を意識することです。単に「有機溶剤=危険」「粉じん=じん肺」と覚えるだけではなく、作業環境測定の対象になる理由まで理解しておくと、デザイン・サンプリングや分析概論の勉強にもつながります。
また、保護具についても、名称だけでなく使い分けを押さえておきましょう。防じんマスク、防毒マスク、保護眼鏡、保護手袋などは、対象となる有害因子によって選び方が変わります。作業環境測定士試験では、現場の安全衛生管理と結びついた知識として整理すると覚えやすいです。
労働衛生関係法令の勉強法
労働衛生関係法令では、労働安全衛生法、作業環境測定法、じん肺法と、それらに基づく命令のうち労働衛生に関する内容が範囲になります。
法令科目は暗記が中心に見えますが、やみくもに条文を読むより、作業環境測定士の試験で問われやすい「義務」と「手続き」に絞るほうが効率的です。
特に押さえたいのは、次のような内容です。
| 覚える視点 | 具体的に確認する内容 |
|---|---|
| 誰が行うのか | 事業者、作業環境測定士、作業環境測定機関など |
| 何を行うのか | 測定、記録、保存、報告、改善措置など |
| どの作業場が対象か | 有害物質、粉じん、特定化学物質、有機溶剤などを扱う作業場 |
| いつ・どの頻度か | 定期測定、記録保存、講習・登録に関する期限 |
| どの法律に基づくか | 労働安全衛生法、作業環境測定法、じん肺法など |
この科目でよくある失敗は、法律名や用語をバラバラに覚えてしまうことです。たとえば、「測定を実施する義務があるのは誰か」「測定結果を保存するのは誰か」「作業環境測定士の業務と登録測定機関の役割はどう違うか」など、主語を意識して覚えると得点につながりやすくなります。
また、法令問題は、選択肢の一部だけが入れ替えられていることがあります。
「作業者」なのか「事業者」なのか、「測定士」なのか「測定機関」なのかで正誤が変わるため、過去問を解くときは正解番号だけでなく、間違いの選択肢のどこが違うのかまで確認しましょう。
デザイン・サンプリングの勉強法
デザイン・サンプリングは、第二種作業環境測定士試験の中でもかなり重要な科目です。範囲には、統計の基礎、ガス・蒸気・粉じんの性質、測定点の設定方法、測定機器・試料採取機器の原理や使い方、採取試料の管理、簡易測定機器などが含まれます。
この科目は、「どこで測るか」「どの方法で採るか」「採った試料をどう扱うか」を学ぶ科目です。作業環境測定士試験らしさが最も出やすい部分なので、独学では時間を多めに取りたいところです。
まず押さえたいのは、単位作業場所、A測定、B測定、測定点、サンプリング時間、試料採取方法です。
A測定は、作業場全体の平均的な作業環境を把握するための測定です。一方、B測定は、有害物質の発散源の近くなど、作業者が高濃度ばく露を受けやすい場所を確認するための測定です。この違いをあいまいにすると、測定点の設定や評価の問題で迷いやすくなります。
勉強するときは、文字だけで覚えるのではなく、作業場の簡単な図を描いて考えるのがおすすめです。
たとえば、塗装ブース、溶接作業場、粉体を投入する作業場、洗浄槽がある作業場などをイメージし、
「発散源はどこか」
「作業者はどこに立つか」
「空気の流れはどうなるか」
「A測定点はどこに置くか」
「B測定が必要になりそうな場所はどこか」
を考えながら覚えると、試験問題に対応しやすくなります。
また、サンプリングでは、ガス・蒸気・粉じんで採取方法の考え方が変わります。ガスや蒸気は吸着管、捕集液、検知管など、粉じんはろ過捕集や分粒装置など、対象物質に応じた採取方法を整理しておくとよいでしょう。
この科目は、統計用語も出てきます。平均、標準偏差、ばらつき、管理濃度、評価値などは、数式を深く追いすぎるよりも、作業環境の良し悪しを判断するために使うものとして理解すると入りやすいです。
分析に関する概論の勉強法
分析に関する概論では、分析化学の基礎理論、定性分析、重量分析、容量分析、機器分析などが範囲になります。
この科目は、化学に苦手意識がある人ほど難しく感じやすいです。ただ、第二種作業環境測定士試験では、大学レベルの分析化学を細かく深掘りするというより、代表的な分析方法の特徴と使い分けを押さえることが重要です。
まずは、次のように整理すると勉強しやすくなります。
| 分析分野 | 勉強するときのポイント |
|---|---|
| 定性分析 | 何が含まれているかを調べる考え方 |
| 重量分析 | 沈殿・ろ過・乾燥・秤量など、質量から求める流れ |
| 容量分析 | 滴定、標準液、終点、濃度計算の基本 |
| 機器分析 | 吸光光度分析、ガスクロマトグラフ、原子吸光分析などの特徴 |
この試験ならではの勉強としては、「採取した試料を、どの分析方法で測るのか」を意識することです。
たとえば、有機溶剤の蒸気を採取した後にどのような分析方法が使われるのか、金属類の測定ではどのような分析方法が関係しやすいのか、粉じんは質量測定とどう関係するのか、というように、デザイン・サンプリングと分析をつなげて覚えると理解が深まります。
分析概論では、分析機器の名前だけを覚えても点につながりにくいです。
「何を測る方法なのか」
「どんな試料に向いているのか」
「前処理が必要か」
「定量に使うのか、確認に使うのか」
をセットで整理しましょう。
また、計算問題が苦手な人は、濃度、希釈、単位換算、採取量、測定値から濃度を求める流れを早めに練習しておくと安心です。作業環境測定では、測定値そのものよりも、空気中濃度としてどう評価するかが重要になるため、単位の扱いに慣れておくことが大切です。
公表問題を使った勉強法
独学で合格を目指すなら、公表問題は必ず使いたい教材です。安全衛生技術試験協会の公表問題ページでは、試験問題と正答が掲載されています。
最初から年度ごとに通して解くより、まずは科目別に分けて解くのがおすすめです。
| 学習段階 | 進め方 |
|---|---|
| 1周目 | 科目ごとに解き、分からない問題はすぐ解説や教材に戻る |
| 2周目 | 間違えた問題だけを解き直し、苦手分野を確認する |
| 3周目 | 本番と同じように時間を意識して解く |
| 直前期 | 法令・デザイン・分析概論の頻出テーマを重点確認する |
公表問題を解くときは、正答だけを覚えないようにしましょう。特に法令とデザイン・サンプリングでは、選択肢の表現が少し変わるだけで正誤が変わります。
間違えた問題は、
「用語の意味を取り違えたのか」
「法律上の主語を間違えたのか」
「A測定とB測定を混同したのか」
「採取方法と分析方法の組み合わせを間違えたのか」
というように、原因を分けて見直すと効果的です。
科目ごとの優先順位
第二種作業環境測定士試験を独学する場合、時間配分はかなり大切です。全部を同じ量だけ勉強するより、苦手になりやすい科目に先に手をつけたほうが合格に近づきます。
| 科目 | 優先度 | 理由 |
|---|---|---|
| デザイン・サンプリング | 高い | 試験特有の内容が多く、測定点や採取方法で差がつきやすい |
| 分析に関する概論 | 高い | 化学・分析機器に慣れていない人がつまずきやすい |
| 労働衛生関係法令 | 中〜高 | 暗記量はあるが、過去問で出題形式に慣れやすい |
| 労働衛生一般 | 中 | 有害因子と健康影響を整理すれば比較的進めやすい |
理系出身者や化学に慣れている人は、分析概論より法令に時間をかけたほうがよい場合があります。反対に、文系出身者や化学が苦手な人は、分析概論とデザイン・サンプリングを早めに始めるのがおすすめです。
第二種作業環境測定士試験は、単に用語を覚えるだけではなく、有害因子を把握し、測定を計画し、試料を採取し、分析して評価する流れを理解することが大切です。
科目ごとに勉強しながらも、最後は「現場でどう測るか」という一本の流れでつなげておくと、試験本番でも判断しやすくなります。
第二種作業環境測定士試験の受験者数・合格率
| 年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
|---|---|---|---|
| 令和7年度 | 1,832人 | 262人 | 14.3% |
| 令和6年度 | 1,644人 | 260人 | 15.8% |
| 令和5年度 | 1,426人 | 368人 | 25.8% |
| 令和4年度 | 1,384人 | 581人 | 42.0% |
| 令和3年度 | 1,229人 | 440人 | 35.8% |
第二種作業環境測定士試験の合格率は、年度によって大きく変動しています。令和4年度は42.0%でしたが、令和6年度は15.8%、令和7年度は14.3%まで下がっており、近年はかなり厳しめの結果になっています。
受験者数は令和3年度の1,229人から令和7年度の1,832人へ増えている一方で、合格者数は令和7年度で262人にとどまっています。合格率だけを見ると、第二種作業環境測定士試験は「受験資格がある人向けの試験だから簡単」とは言いにくく、独学で受ける場合も科目ごとの対策が必要な試験といえるでしょう。
勉強時間・合格までのスケジュール
第二種作業環境測定士試験の勉強時間は、化学・労働衛生・安全衛生法令の知識があるかどうかで大きく変わります。
目安としては、実務経験者や理系出身者で80〜120時間程度、初学者なら150〜250時間程度は見ておきたい試験です。合格率が低めの年度もあるため、短期間で軽く対策するより、科目ごとに計画を立てて進めるほうが安全です。
理系出身・化学の基礎がある人
化学、分析、環境測定などの基礎知識がある人は、分析に関する概論で大きくつまずきにくいため、比較的スムーズに進めやすいです。
勉強時間の目安は、80〜120時間程度です。
このタイプの人は、分析方法や濃度計算は理解しやすい一方で、労働衛生関係法令や作業環境測定法の細かいルールで点を落としやすいです。理系科目だけに偏らず、法令、測定点の設定、A測定・B測定、作業環境評価の流れを重点的に確認しましょう。
スケジュール例
| 期間 | 勉強内容 |
|---|---|
| 1週目 | 試験科目の全体像を確認し、労働衛生一般と法令を読む |
| 2〜3週目 | デザイン・サンプリング、A測定・B測定、測定点の考え方を学ぶ |
| 4週目 | 分析概論を確認し、苦手な分析方法や計算だけ補強する |
| 5〜6週目 | 公表問題を科目別に解き、間違えた分野を復習する |
| 直前期 | 法令、デザイン・サンプリング、頻出用語を最終確認する |
理系知識がある人でも、作業環境測定士試験は「化学が分かれば受かる」試験ではありません。測定の計画、採取方法、評価、法令上の義務まで含めて問われるため、試験特有のルールに慣れることが大切です。
安全衛生・環境測定の実務経験がある人
職場で安全衛生管理、化学物質管理、作業環境測定の補助、環境分析などに関わっている人は、試験内容を実務と結びつけやすいです。
勉強時間の目安は、70〜100時間程度です。
実務経験がある人は、有機溶剤、粉じん、特定化学物質、測定対象作業場などのイメージがつかみやすいため、初学者より有利です。ただし、現場で何となく知っている知識と、試験で問われる正確な用語・定義・法令上の扱いは別物です。
特に、A測定とB測定の違い、単位作業場所、測定点の設定、記録保存、事業者の義務などは、試験用に整理しておきましょう。
スケジュール例
| 期間 | 勉強内容 |
|---|---|
| 1週目 | 公表問題を一度解き、現在の理解度を確認する |
| 2週目 | 法令と労働衛生一般を重点的に復習する |
| 3〜4週目 | デザイン・サンプリングを中心に、測定点・採取方法を整理する |
| 5週目 | 分析概論と濃度計算を確認する |
| 6週目 | 公表問題を解き直し、苦手科目をつぶす |
実務経験者は、最初に公表問題を解いてみるのがおすすめです。すでに分かる分野と、試験用に覚え直すべき分野がはっきりするため、効率よく勉強できます。
文系・化学が苦手な初学者
化学や分析にあまり触れてこなかった人は、かなり余裕を持ったスケジュールを組んだほうがよいです。作業環境測定士試験では、法令だけでなく、分析方法、サンプリング、濃度、単位換算なども出てくるため、最初は専門用語に戸惑いやすいです。
勉強時間の目安は、150〜250時間程度です。
初学者の場合、いきなり公表問題を解いても、用語の意味が分からず進みにくいことがあります。まずは労働衛生一般で有害物質や健康障害のイメージをつかみ、その後にデザイン・サンプリング、分析概論へ進むと理解しやすくなります。
スケジュール例
| 期間 | 勉強内容 |
|---|---|
| 1〜2週目 | 試験全体の構成、有害物質、労働衛生の基本を押さえる |
| 3〜4週目 | 労働衛生関係法令を読み、事業者の義務や測定制度を整理する |
| 5〜7週目 | デザイン・サンプリングを重点的に学ぶ |
| 8〜10週目 | 分析概論、分析方法、濃度計算、単位換算を練習する |
| 11〜12週目 | 公表問題を科目別に解く |
| 直前期 | 間違えた問題、法令、A測定・B測定、分析方法を総復習する |
文系・初学者は、分析概論を後回しにしすぎないことが大切です。苦手だからといって直前期まで残すと、分析機器の名前や計算、濃度の考え方で一気に負担が大きくなります。早い段階で軽く触れておき、何度も繰り返して慣れていくほうが現実的です。
働きながら受験する人
仕事をしながら勉強する場合は、1日あたりの勉強時間を無理に長くするより、2〜3か月かけて継続するスケジュールがおすすめです。
勉強時間の目安は、知識がある人で1日1時間を2〜3か月程度、初学者なら平日1時間+休日2〜3時間を3か月程度見ておくと安心です。
スケジュール例
| 期間 | 平日の勉強 | 休日の勉強 |
|---|---|---|
| 1か月目 | 労働衛生一般・法令を少しずつ読む | 1週間分の復習、用語整理 |
| 2か月目 | デザイン・サンプリング、分析概論を進める | 計算問題、測定点、分析方法をまとめる |
| 3か月目 | 公表問題を科目別に解く | 本番形式で解き、間違えた分野を復習 |
働きながら受験する人は、法令や用語暗記を平日に回し、デザイン・サンプリングや分析概論のように考える科目を休日にまとめて進めると効率的です。
短期合格を目指す人
短期で合格を目指す場合は、すべてを丁寧に理解しようとするより、試験で点につながりやすい分野を優先する必要があります。
目安として、知識がある人なら1か月で80〜100時間程度、初学者なら短期合格はかなり負担が大きくなります。
短期対策で優先したいのは、以下の分野です。
| 優先度 | 勉強内容 |
|---|---|
| 高い | デザイン・サンプリング、A測定・B測定、単位作業場所 |
| 高い | 労働衛生関係法令、事業者の義務、測定結果の扱い |
| 高い | 分析方法の特徴、濃度計算、単位換算 |
| 中 | 有害因子と健康障害、保護具、作業環境改善 |
| 中 | 細かい分析理論や周辺知識 |
短期合格を狙うなら、公表問題を中心に進めることが重要です。最初に問題を解き、分からない部分を教材で確認し、もう一度同じ問題を解き直す流れを繰り返しましょう。
ただし、第二種作業環境測定士試験は合格率が低めの年度もあるため、完全な初学者が数週間だけで合格を狙うのは簡単ではありません。余裕を持てるなら、2〜3か月前から準備するほうが安全です。
勉強時間の目安まとめ
| 受験者の状況 | 勉強時間の目安 | 学習期間の目安 |
|---|---|---|
| 安全衛生・環境測定の実務経験がある人 | 70〜100時間 | 1〜2か月 |
| 理系出身・化学の基礎がある人 | 80〜120時間 | 1.5〜2.5か月 |
| 化学は苦手だが、暗記は得意な人 | 120〜180時間 | 2〜3か月 |
| 文系・完全初学者 | 150〜250時間 | 3〜4か月 |
| 働きながら受験する人 | 100〜200時間 | 2〜4か月 |
| 短期合格を目指す人 | 80〜100時間以上 | 1か月前後 |
第二種作業環境測定士試験は、科目数が極端に多い試験ではありませんが、内容はかなり専門的です。特に、デザイン・サンプリングと分析概論は、初学者が短期間で理解しきるには負担があります。
合格を目指すなら、まず労働衛生一般と法令で土台を作り、早い段階からデザイン・サンプリングと分析概論に触れておくことが大切です。最後は公表問題を使って、知識を本番の出題形式に合わせて仕上げていきましょう。

