公認会計士試験の勉強を始めるとき、最初に迷いやすいのが「どのテキストを使えばいいのか」という点です。
公認会計士試験は科目数が多く、財務会計論・管理会計論・監査論・企業法・租税法など、それぞれで必要になる知識もかなり違います。
特に初学者の場合、書店やネットで参考書を探しても、種類が多すぎて「結局どれを選べばいいの?」と感じやすいと思います。
分厚い教材を見るだけで少し気が重くなったり、逆に薄い本だと「これだけで足りるのかな」と不安になったりすることもあります。
公認会計士試験では、テキスト選びも大切ですが、それ以上に大事なのは、選んだ教材を何度も使い込むことです。
評判のよい教材をたくさん買っても、読み切れなかったり、問題演習まで進められなかったりすると、なかなか得点にはつながりません。
この記事では、公認会計士試験の合格者へのアンケートや、実際に受験勉強を経験した人の声をもとに、テキスト・問題集の選び方を整理します。
あわせて、初学者が使いやすい教材、独学で勉強する場合に意識したいポイント、科目別にどのような教材を選べばよいのかも分かりやすく紹介していきます。
まずは漫画で公認会計士に必要な知識の全体像をつかむ
公認会計士試験の勉強が初めての人は、いきなり本格的なテキストに入る前に、漫画やイラスト入りの本で全体像をつかんでおくのも一つの方法です。
公認会計士試験では、財務会計論・管理会計論・監査論・企業法など、聞き慣れない科目がいくつも出てきます。最初から専門用語ばかりの教材に入ると、「結局これは何のために勉強しているのか」が分からなくなりやすいです。
その点、漫画やイラスト入りの入門書は、会計や監査のイメージをつかみやすく、勉強の入り口として使いやすいです。公認会計士という仕事の雰囲気や、決算書・会計の基本的な考え方をざっくり理解してから本格的な勉強に入ると、専門テキストの内容も少し頭に入りやすくなります。
ただし、漫画系の本はあくまで入門用です。試験で点を取るための教材ではないため、これだけで合格を目指すことはできません。
また、公認会計士試験向けに作られたテキストではない場合、試験制度や会計基準、法令に関する情報が古くなっている可能性があります。特に会計や法律に関する内容は変更されることがあるため、漫画や一般向けの入門書で学んだ内容を、そのまま試験対策の知識として覚え込むのは避けた方がよいです。
「できるだけ最短で勉強を進めたい」「回りくどいことはしたくない」という人は、このステップは飛ばして問題ありません。最初から公認会計士試験向けの基本テキストや講座に入った方が、効率よく進められる場合もあります。
一方で、会計の知識がほとんどない人や、いきなり分厚いテキストを開くのが不安な人は、最初の1冊として漫画やイラスト入りの本を使うと、心理的なハードルを下げやすくなります。
『マンガでわかる公認会計士〜松本翔の事件簿〜』は、公認会計士の仕事や会計の考え方を、ストーリー形式で学べる入門向けの本です。
実在の公認会計士である松本翔氏をモデルにした主人公が、起業・倒産・M&A・消費税・監査などに関する問題を解決していく内容で、公認会計士がどのような場面で活躍するのかをイメージしやすくなっています。
『マンガでやさしくわかる決算書』は、決算書の読み方をマンガ形式で学べる入門書です。
貸借対照表・損益計算書・キャッシュフロー計算書の基本を、ストーリーと図解を交えながらやさしく説明しているため、会計に苦手意識がある人でも読み進めやすい内容です。数字アレルギーの主人公が決算書を学んでいく流れになっており、専門用語をいきなり覚えるというより、会社のお金の動きをイメージしながら理解できます。
公認会計士試験のテキストを選ぶポイント
公認会計士試験のテキストを選ぶときは、まず最新版かどうかを確認しておきたいです。
公認会計士試験は、会計基準や法律の内容が関係するため、古いテキストを使うと現在の試験内容とズレている可能性があります。特に企業法、監査論、租税法は制度改正の影響を受けやすいので、できるだけ新しい教材を選ぶ方が安心です。
会計の本や決算書の読み方を学べる本はたくさんありますが、公認会計士試験では、財務会計論・管理会計論・監査論・企業法・租税法などを試験で得点できるレベルまで仕上げる必要があります。
そのため、一般向けの会計本だけでは内容が足りません。入門書として使うのはよいですが、メイン教材は公認会計士試験に対応したテキストを選ぶ方が安心です。
特に注意したいのは、短答式と論文式の両方を意識できるかです。
短答式試験では、正誤判断や計算処理のスピードが問われます。一方、論文式試験では、知識を覚えているだけでなく、答案として説明できる力が必要です。テキストを選ぶときは、単に用語を覚えられるかだけでなく、論点の考え方や理由まで理解しやすいかを見ておくとよいでしょう。
また、公認会計士試験は科目同士のつながりも強い試験です。
財務会計論で学ぶ会計処理は、監査論の理解にも関係しますし、企業法の知識は会社の仕組みを理解するうえで役立ちます。科目ごとにバラバラに覚えるというより、試験全体の流れをつかみながら学べる教材の方が使いやすいです。
さらに、問題集や過去問とつなげて使いやすいかも重要です。
公認会計士試験では、テキストを読んで終わりではなく、実際に問題を解いて、短答式で選択肢を判断できる状態、論文式で答案を書ける状態まで持っていく必要があります。テキストで学んだ論点をすぐに問題演習で確認できる教材を選ぶと、知識が定着しやすくなります。
独学で進める場合は、解説の詳しさもかなり大切です。
財務会計論や管理会計論は、計算結果だけでなく、なぜその処理になるのか、どこで間違えやすいのかまで説明されている教材の方が復習しやすいです。企業法や監査論も、単なる暗記ではなく、制度の趣旨や判断の流れが分かる解説だと理解しやすくなります。
最後に、教材を増やしすぎないことも大切です。
公認会計士試験は科目数が多いため、不安になるとテキストや問題集をどんどん買い足したくなります。ですが、教材を増やしすぎると、1冊ごとの完成度が下がりやすくなります。
まずはメイン教材を決めて、財務会計論と管理会計論は問題演習まで繰り返す。監査論や企業法は、テキストと問題集を行き来しながら重要論点を固める。そうした使い方ができる教材を選ぶことが、公認会計士試験では特に重要です。
初学者はまず簿記・会計の基礎が分かるテキストを選ぶ
会計の勉強が初めての人は、いきなり公認会計士試験向けの本格的なテキストに入るより、まずは簿記・会計の基礎が分かる教材から始める方がスムーズです。
公認会計士試験では、財務会計論や管理会計論が重要になりますが、これらの科目は簿記の考え方が土台になります。仕訳、勘定科目、貸借対照表、損益計算書などの基本があいまいなままだと、会計士試験用のテキストを読んでも途中でつまずきやすくなります。
初学者向けとして使いやすいのは、『スッキリわかる日商簿記3級』や『みんなが欲しかった!簿記の教科書 日商3級 商業簿記』のような、簿記3級レベルをやさしく説明しているテキストです。公認会計士試験そのものの教材ではありませんが、仕訳や決算書の基本を理解する入口として使いやすいです。
財務会計論におすすめのテキスト・問題集
財務会計論は、公認会計士試験の中でも特に学習量が多い科目です。
簿記の計算だけでなく、財務諸表論、連結会計、企業結合、金融商品、税効果会計など、かなり広い範囲を学ぶ必要があります。
そのため、財務会計論の教材は、テキストで理解する → 問題集で手を動かす → 過去問で試験形式に慣れるという流れで選ぶのがおすすめです。
『大原の公認会計士受験シリーズ 短答式対策 財務会計論〈理論〉肢別チェック』は、財務会計論の理論問題を短答式試験向けに確認できる問題集です。
財務会計論は計算問題のイメージが強い科目ですが、短答式では会計基準や用語、処理の考え方を問う理論問題も出題されます。この教材は、肢別形式で一つひとつの選択肢を確認できるため、正誤判断の練習をしながら知識を整理しやすいのが特徴です。
注意したいのは、財務会計論の教材を増やしすぎないことです。
財務会計論は範囲が広いので、不安になると何冊も買いたくなりますが、まずはメインテキストと問題集を決めて、何度も繰り返す方が効果的です。
財務会計論におすすめのテキスト・問題集
財務会計論は、公認会計士試験の中でも特に学習量が多い科目です。
計算問題だけでなく、会計基準や財務諸表論の理論問題も出題されるため、「計算用の問題集」と「理論対策用の問題集」を分けて考えると選びやすくなります。
まず短答式の理論対策として使いやすいのが、『大原の公認会計士受験シリーズ 短答式対策 財務会計論〈理論〉肢別チェック』です。
肢別形式で一つひとつの選択肢を確認できるため、会計基準や理論分野の正誤判断を鍛えやすい問題集です。財務会計論は計算の印象が強いですが、短答式では理論問題も重要になるため、テキストを読んだあとに知識が定着しているか確認する教材として使いやすいです。
計算対策では、『ベーシック問題集 財務会計論 計算問題編』のような、基本論点を繰り返し解ける問題集が候補になります。
財務会計論の計算は、仕訳、個別論点、連結会計、企業結合など、手を動かして慣れる部分が多いです。解説を読んで理解したつもりでも、実際に解くと手が止まることがあるため、基本問題を何度も回せる教材を選ぶと勉強しやすくなります。
管理会計論におすすめのテキスト・問題集
管理会計論は、財務会計論と同じく計算力が重要になる科目です。
原価計算、標準原価計算、直接原価計算、意思決定会計、予算管理など、実際に手を動かして解き方を身につける必要があります。
まず候補になるのが、『ベーシック問題集 管理会計論』です。
管理会計論の基本論点を確認しながら、計算問題の解き方に慣れるための問題集として使いやすい教材です。原価計算や標準原価計算などは、解説を読むだけでなく、何度も解き直して処理の流れを身につけることが大切です。
短答式対策としては、『短答式対策 管理会計論 肢別チェック問題集』も候補になります。
肢別形式で一つひとつの選択肢を確認できるため、計算だけでなく、管理会計論の理論的な知識や正誤判断の練習にも使いやすいです。短答式では、計算問題だけでなく理論問題も出題されるため、知識の穴を確認する教材として役立ちます。
監査論におすすめのテキスト・問題集
監査論は、暗記科目に見えますが、ただ用語を覚えるだけでは点数につながりにくい科目です。
監査の目的、監査計画、リスク評価、監査手続、監査報告という流れを理解しながら、短答式では正誤判断、論文式では説明できる力を身につける必要があります。
監査論の問題演習用として使いやすいのが、『公認会計士 短答式試験対策シリーズ ベーシック問題集 監査論』です。
TAC出版の教材で、入門レベルの学習を終えた人が、短答式に向けて基礎問題を固めるための問題集として紹介されています。基本論点を落とさないための演習に使いやすく、監査論の学習を一通り終えた後の確認用に向いています。
もう少し本試験に近いレベルまで進めたい場合は、『公認会計士 短答式試験対策シリーズ アドバンスト問題集 監査論』も候補になります。
こちらもTAC出版の教材で、ベーシック問題集の上級編として位置づけられており、本試験に近い質とレベルの問題を解きたい人向けです。基礎問題をある程度解けるようになってから、得点力を上げるために使うとよいでしょう。
論文式試験対策に使いやすい教材
論文式試験の対策では、短答式のように「正しい選択肢を選べるか」だけではなく、知識を答案として書けるかが重要になります。
そのため、テキストを読むだけでなく、過去問や答練を使って、実際に文章で説明する練習を入れる必要があります。
論文式対策でまず使いやすいのが、『公認会計士試験 論文式試験 必修科目 過去問題集』です。
TAC出版の2026年度版では、2023〜2025年の本試験を収載しており、論文式試験で求められる思考力・判断力・応用力や、答案作成・時間配分を確認できる教材として紹介されています。
公認会計士試験はテキストだけで独学できるのか
公認会計士試験は、テキストだけで独学することが不可能な試験ではありません。
実際に、独学に近い形で勉強を進める人もいます。
ただし、正直にいうと、完全にテキストだけで合格を目指すのはかなり難しいです。
公認会計士試験は、財務会計論・管理会計論・監査論・企業法・租税法など、学習範囲がとても広い試験です。テキストを読めば内容を確認することはできますが、「どこが重要なのか」「どのレベルまで解けるようにすればいいのか」「論文式でどう書けばいいのか」は、独学だと判断しにくい部分があります。
特に初学者の場合、最初の段階でつまずきやすいです。
財務会計論の計算処理や、管理会計論の解き方、企業法・監査論の考え方などは、文章を読んだだけではイメージしにくいことがあります。分からない部分を自分だけで解決しようとすると、かなり時間がかかる場合もあります。
また、公認会計士試験ではテキストを読むだけでは足りません。
問題集、過去問、答練、模試などを使って、実際に解ける状態まで持っていく必要があります。特に論文式試験では、知識を覚えるだけでなく、答案として書く練習が欠かせません。
そのため、テキストを中心に勉強する場合でも、完全独学にこだわりすぎない方が現実的です。
費用を抑えたい人でも、答練や模試だけは利用する、苦手科目だけ講座を使う、解説が詳しい問題集を選ぶなど、部分的に外部教材を取り入れると勉強しやすくなります。
「できるだけお金をかけずに進めたい」という気持ちは分かりますが、公認会計士試験は勉強時間が長くなりやすい試験です。教材費を抑えすぎた結果、遠回りになってしまうこともあります。
テキストだけで進めるなら、かなり強い自己管理力と、分からない部分を調べ続ける根気が必要です。
初学者の場合は、テキストを軸にしつつも、講座・答練・模試などを必要に応じて組み合わせる方が、合格までの道筋は見えやすくなります。
論文式試験は、知識を持っていても、問題文の読み取り方や答案の組み立て方に慣れていないと点数につながりにくいです。
過去問題集を使うことで、「どの論点がどのように問われるのか」「答案ではどの程度まで書く必要があるのか」を確認しやすくなります。
まとめ
公認会計士試験のテキスト選びでは、最後まで使い切れる教材を選ぶことが大切です。
科目数が多く範囲も広いため、不安になると教材を増やしたくなりますが、何冊も買いすぎると中途半端になりやすいです。まずはメインのテキストを決めて、問題集や過去問とあわせて繰り返し使う方が効果的です。
初学者は、簿記や会計の基礎が分かる入門書から始めても問題ありません。ただし、本格的な対策では、公認会計士試験向けの最新版テキストを使うことが重要です。
テキストで知識を入れ、問題集・過去問・答練で「解ける」「書ける」状態に近づけていきましょう。
